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NEWS - 2025.12.22

医療空間に広がる「元気をもらえる」アートのまなざし——SBIメディック×SBI アートオークション「アート×ウェルビーイング」企画展示 

アートは、日々の中で何気なく心を和らげ、前向きな気持ちをもたらす存在として近年注目されています。医療空間においても、作品が視界に入ることで緊張感がほぐれ、空間全体に穏やかな印象をもたらすことが期待されています。

SBIウェルネスバンク株式会社(以下「SBIウェルネスバンク」)と、SBIアートオークション株式会社(以下「SBIアートオークション」)は、アートを通じたウェルビーイング向上を目指す共同企画「アート×ウェルビーイング」展示を実施します。「SBIメディック」に来院される皆さまに安心感と穏やかさをお届けすることを目指し、視覚的な明るさや親しみやすさを備えた作品を選定しました。自然に視線を向けたくなり、元気を感じていただけるような作品をご紹介いたします。

1.医療空間におけるアートの役割

<SBIメディック/特別診察室> <Special Consultation Room / SBI Medic>
<SBIメディック/特別診察室>

医療空間は、来院者が緊張や不安を感じやすい環境です。診療前の待ち時間や検査直前など、心が揺れやすい状況が連続する場面が続く中で、空間の在り方は心理状態に大きな影響を与えます。こうした環境下でアートが果たす役割は、単なる装飾にとどまらず、鑑賞者の感情にそっと寄り添う"視覚的な支え”として機能する点にあります。アートがもつ色彩やモチーフ、構図は、言葉以上に直接的に心へ作用します。鮮やかな色合いや穏やかな線の動きに触れることで、鑑賞者が自然と呼吸を整え、緊張がゆっくりとほぐれる瞬間を生むこともあります。本人の意識とは別のところで静かに起こるこうした心の動きは、医療空間の質を高める一要素となり得ます。

このようなアートの作用については、国内外で研究が進んでおり、世界保健機関(WHO)が2019年に発表した報告書では、芸術が心身の双方に寄与し得る可能性について、次のように述べられています。

“The findings demonstrated that the arts can potentially impact both mental and physical health.”
(邦訳:芸術は精神的健康と身体的健康の双方に影響を及ぼし得る。)
— WHO, 2019, What is the evidence on the role of the arts in improving health and well-being? A scoping review, Summary p. vii

また、同報告書では芸術が健康的な行動変容を促す可能性についても言及されています。

“There is promising preliminary evidence from individual observational studies that people who engage with the arts are more likely to lead healthier lives, including eating healthily and staying physically active, irrespective of their socioeconomic status and social capital.”
(邦訳:芸術に触れる人々は、社会経済的背景や社会的資本にかかわらず、健康的な食事や身体活動など、より健康的な生活を送る傾向があると示す予備的なエビデンスが報告されています。)
— WHO, 2019, What is the evidence on the role of the arts in improving health and well-being? A scoping review, p.16

鮮やかな色彩や親しみやすいモチーフに触れることで、鑑賞者が自然と前向きな気持ちに切り替わることがあるという指摘は、今回の企画の背景とも呼応するものとなります。

2.企画「アート×ウェルビーイング」について

<SBIメディック/内視鏡待機室> <Endoscopy Waiting Room / SBI Medic>
<SBIメディック/内視鏡待機室>

本展示の作品選定にあたり、SBIアートオークションでは、2025年5月に開催した「第72回SBIアートオークション|Modern and Contemporary Art」の会場にて「元気をもらえるアート」をテーマとした来場者アンケートを実施しました。実施期間は2025年5月21日(水)〜24日(土)の4日間。会場に設置したQRコードを読み取り、Microsoft Formsにアクセスする参加型形式で行い、109件の有効回答が集まりました。アンケートは、事前に選定した6点の作品と「その他」を選択肢とした1人1票の自由投票により構成し、来場者の率直な感覚を収集することを目的としました。結果を集計した作家別得票割合(参照:グラフ1「作家得票割合」)からは、得票の大小にかかわらず、一定の傾向が読み取れました。

グラフ1「作家得票割合」
グラフ1「作家得票割合」

自由記述を含む回答内容から抽出された主な傾向は、下記の三点です。
• カラフルで明快な色彩表現
• 親しみやすいモチーフやキャラクター性
• 軽やかでポジティブなイメージ構成

投票上位にはロッカクアヤコ、草間彌生、KAWSといった作家名が挙がりましたが、選定プロセスにおいては、得票結果のみならず、上記の視覚的傾向を含めた全体の分析を踏まえ、「自然と視線が向かい、明るい印象をもたらす」作品群を中心に構成しています。そのため、本展示では投票上位の作家に加え、同様に親しみやすい世界観を持つ奈良美智や、色彩と構図の軽快さが特徴的な村上隆の作品も紹介し、鑑賞者が心地よく作品へと向き合える展示構成を目指しました。また、展示と並行して来院者アンケートも実施し、アート鑑賞前後の気分の変化や印象に残った作品の傾向を分析し、今後の展示企画や医療空間づくりに活かしていく予定です。

3.作家・作品紹介

◆ 草間彌生(Yayoi Kusama)
<SBIメディック/内視鏡ラウンジ> <Endoscopy Lounge / SBI Medic>
<SBIメディック/内視鏡ラウンジ>

1929年長野県生まれ。草間彌生の作品は、幼少期の幻視体験を原点とし、水玉模様や網目模様を反復して用いた独自の表現で知られています。赤・黄・緑など鮮やかな色面に展開される連続的なモチーフは、“無限”や“生命の循環”といった普遍的なテーマを内包し、見る者を自然に画面へと引き込みます。また、鏡や光を取り入れたインスタレーションは、鑑賞者を包み込むような没入感を生み、その世界観を体感的に味わうことができます。本展示では、日常的なモチーフを描いた作品や、表情ゆたかな人物像が複数描かれた作品など、草間特有の幻想的なリズムと華やかさを併せ持つ作品群を紹介します。鮮烈な色彩と律動的な構図が響き合う画面には、生命感あふれる草間芸術の魅力が凝縮されています。

◆ 村上隆(Takashi Murakami)
<SBIメディック/待合室> <Waiting Room / SBI Medic>
<SBIメディック/待合室>

1962年東京都生まれ。村上隆は、日本美術に見られる平面的な表現と、アニメやマンガなどの大衆文化を接続した「スーパーフラット」理論を提唱し、国際的な評価を確立しました。遠近法を排したフラットな構成、明快な色彩、装飾性を兼ね備えた画面は、現代社会に対する批評性を含みながらも独自の美意識を形成しています。絵画・彫刻・ファッション・メディアアートなど多岐にわたる領域で活動し、作品ごとに異なるスケールと表現形式を自由に往還する点も特徴です。本展示では、花をモチーフとした華やかな作品を中心に紹介。祝祭的な雰囲気と緻密な構成が共存する村上作品は、鑑賞者に強い印象を残します。

◆ ロッカクアヤコ(Rokkaku Ayako)
<SBIメディック/内視鏡待機室> <Endoscopy Waiting Room / SBI Medic>
<SBIメディック/内視鏡待機室>

1982年千葉県生まれ。ロッカクアヤコは、筆を使わず指や手のひらで絵の具を直接のばす独自の描画法を特徴とし、その即興性と大胆な動きが作品のリズムを形づくっています。夢のような少女像や花・動物が、鮮やかな色彩と勢いのある線で描かれ、画面には“手の動きの痕跡”がそのまま残るような生々しさと躍動感があります。描く行為そのものを作品へと昇華するような手法は、鑑賞者に作家のエネルギーが直接伝わる力強さを持っています。本展示では、象徴的な少女像を描いた作品を紹介し、ロッカクらしい伸びやかな世界観を味わうことができます。

◆ 奈良美智(Yoshitomo Nara)
<SBIメディック/内視鏡待機室> <Endoscopy Waiting Room / SBI Medic>
<SBIメディック/内視鏡待機室>

1959年青森県生まれ。奈良美智は、大きな目や印象的な表情をもつ子どもや動物を主題に、無邪気さの奥に潜む強さや孤独、静かな感情を描き出す作品で知られています。鑑賞者は作品と向き合うなかで、内面の感情が自然と呼び起こされ、作品と静かに対話するような感覚が生まれます。本展示でも、奈良作品特有の静謐でありながら親しみやすさを感じる表情や姿勢が描かれ、鑑賞者を穏やかな余韻へ誘います。シンプルな構図の中に深みのある世界観が宿る点は、奈良作品の大きな魅力といえます。

◆ カウズ(KAWS / Brian Donnelly)
<SBIメディック/内視鏡ラウンジ> <Endoscopy Lounge / SBI Medic>
<SBIメディック/内視鏡ラウンジ>

1974年アメリカ・ニュージャージー州生まれ。KAWSは、ストリートアートを起点に、絵画・立体・大型インスタレーションなど幅広いジャンルで活動する現代アーティストです。独自のキャラクター表現、滑らかな線、鮮やかな色面、明快な輪郭線が組み合わさり、ポップアートの系譜に位置づけられる一方で、作品には独特の情緒が漂います。広告看板への加筆やタギングをきっかけに注目を集め、国際的な人気を確立した後も、常に新しい表現領域を開拓し続けています。本展示作品では、迫力ある構成や鮮烈な色彩、高い完成度によって、KAWSならではの世界観を体験できます。

◆ ミスター・ドゥードゥル(Mr Doodle)
<SBIメディック/特別診察室> <Special Consultation Room / SBI Medic>
<SBIメディック/特別診察室>

1994年イギリス・ケント生まれ。ミスター・ドゥードゥルは、下書きをせずに連続した線で画面を埋め尽くす“ドゥードゥル(落書き)”スタイルを特徴とし、ユーモアと躍動感に満ちた世界観を構築しています。キャラクターや記号が次々に連なりながら画面を埋めていく構成は、作家自身の言葉で“グラフィティ・スパゲッティ”と表現され、独特のリズムと楽しさが生まれます。本展示作品でも、モチーフが軽快に響き合い、ドゥードゥルらしいカラフルで自由な表現を味わうことができます。視線を動かすたびに新たな形が現れる作風は、幅広い鑑賞者に親しまれる要素を持っています。

◆ 東山魁夷(Kaii Higashiyama)
<SBIメディック/ラウンジ> <Lounge / SBI Medic>
<SBIメディック/ラウンジ>

1908年横浜市生まれ。東山魁夷は、「東山ブルー」と称される深い青と緑の色調を特徴とし、静謐な風景描写を通じて独自の世界観を築いた日本画家です。東宮御所の壁画や唐招提寺御影堂の障壁画など数々の重要作品を手がけ、戦後日本画壇を代表する画家の一人として高い評価を受けています。
《春兆》(1988年)は、冬から春へと季節が移ろう瞬間をとらえた木版画で、淡く透き通る色彩が静かな息づかいを伝えます。繊細な筆致と澄んだ色調が調和した作品には、東山が追求した深い精神性が宿っています。

4.参考文献・脚注

【脚注1:WHO 2019 Report “What is the evidence on the role of the arts in improving health and well-being?”】
PDF:https://iris.who.int/server/api/core/bitstreams/e1cc8536-773d-446f-9822-8ae376f41415/content 
引用原文:
• “The findings demonstrated that the arts can potentially impact both mental and physical health.”(Summary p. vii)
• “There is promising preliminary evidence from individual observational studies that people who engage with the arts are more likely to lead healthier lives, including eating healthily and staying physically active, irrespective of their socioeconomic status and social capital.”(p.16)

【脚注2:WHO × Jameel Arts & Health Lab — The Lancet Global Series on the Health Benefits of the Arts (2023)】
https://www.who.int/news/item/25-09-2023-ground-breaking-research-series-on-health-benefits-of-the-arts
https://www.who.int/initiatives/arts-and-health
内容:非感染性疾患(NCDs)に対する芸術の潜在的効果、社会的処方、教育・医療・文化政策とのセクター横断的連携などを提示。
Topics include potential impacts on NCDs, social prescribing, and cross-sector collaboration across education, health care, and cultural policy.


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