AUCTION - 2026.02.12
[Highlight] 藤田 嗣治 | エレーヌ・フランクの肖像 | 2026年3月 Modern Legacy: An Important Japanese Collection of 20th & 21st Century Masters
本作品のモデルは、ベルギーのアントワープを拠点に活躍した画商フランソワ・フランクの娘エレーヌである。藤田と当時暮らしていたユキの回想によれば、フランソワが藤田の作品に強い関心を寄せていることを知ったエレーヌは、1924年初頭、母とともに藤田のアトリエを訪れ、父の誕生日の贈り物として自身の肖像画を依頼したという。当時、20代前半であった彼女が支払える謝礼は少額だったが、藤田はその清純さに心を惹かれ、快く制作を引き受けたとされる。後にこの経緯を知った父フランソワは、藤田の誠意に感銘を受け、倍額の謝礼を携えてアトリエを訪れたことを契機に二人の交流が始まり、以後フランソワは藤田の活動を熱心に支援することとなった。
鮮やかな緑と白と黒の大胆な色分けが印象的なドレスは、当時、新進のデザイナーだったジャンヌ・ランバンによる新作とされる。エレーヌが晩年、息子に語ったところによれば、彼女が左手に持つ丸いポシェットの中には、弾を込めたピストルが入っていたという。藤田がモデルを誘惑するという噂を耳にしていたエレーヌが、護身用として携えていたのである。相当の覚悟をもってアトリエを訪れたであろう娘の思いは、本作にみられる張りつめた緊張感や、細部にまで冴えわたる入念な線描として、画面に刻み込まれているかのようである。
本作が制作された1924年は、藤田がパリへ移住して8年後の1921年に「乳白色の下地」と呼ばれる独自の技法を確立し、西洋画壇の絶賛を浴びてエコール・ド・パリの寵児として大きな名声を得た、その最盛期にあたる。画面左にはヴェルサイユ宮殿の庭園を描いた版画、その右には陶製の飾り皿、ベッドには18世紀後半に成立したジュイ布風の模様をもつ布が配され、平面的な造形要素が画中画として重要な役割を担っている。これらはいずれも藤田が蚤の市などで収集した骨董品であり、そのノスタルジックな室内装飾と、最新モードの新作ドレスをまとった初々しい女性像との対比は、当時の鑑賞者の目には全く新鮮に映ったに違いない。
1924年3月に完成した本作は、その後アントワープへ送られ、同年5月末から開催された「現代美術展」に≪H・F嬢の肖像≫の題名で出品された。その際、批評家ジョルジュ・マルリエは「流行のモードを描いた古い版画に漂う魅力を、ここでフジタは芸術の領域に移しかえた」と評している(『Sélection: Chronique de la vie artistique et littéraire』第 3年8号、アントワープ、1924年6月)。
フランソワが世を去った後、彼のコレクションの多くはアントワープ王立美術館に寄贈されたが、本作はその中に含まれていなかった。おそらく娘エレーヌが、父との思い出深い特別な作品として、手元に留めたのであろう。
藤田嗣治の作品は、1920年代パリでの成功を起点として、21世紀の国際美術市場において再評価が進み、近年あらためて注目を集めている。2018年、ロンドンのボナムスオークションにおいて、食卓で賑やかな饗宴を繰り広げる猫たちを描いた絵画《La fête d’anniversaire》が当初の予想落札額を大きく上回る約710万ポンド(当時の為替レートで約10億5,500万円)で落札され、オークションにおける作家の最高落札価格を更新した。こうした市場での評価の高まりは、藤田の最盛期に制作された本作の位置づけを、今日あらためて照らし出すものといえる。
(参考文献)
林洋子『藤田嗣治 作品をひらく: 旅・手仕事・日本』 名古屋大学出版会、2008年
『生誕130年記念 藤田嗣治展-東と西を結ぶ絵画-』(展覧会カタログ)中日新聞社、2016年

Lot.043 藤田 嗣治
エレーヌ・フランクの肖像
油彩、キャンヴァス
144.5 × 114.0 cm (56⅞ × 44⅞ in.)
JPY 200,000,000 - 400,000,000
USD 1,282,100 - 2,564,100
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